【アイビー茜×ワクサカソウヘイ対談】占いは必要なもの? 怖いけど知りたい、その心理とは

【アイビー茜×ワクサカソウヘイ対談】占いは必要なもの? 怖いけど知りたい、その心理とは

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 コラムニスト、コント作家、脚本家、舞台のプロデューサーなど、多方面で活躍中のワクサカソウヘイさんと、占い師アイビー茜さんが初対談! 著作『男だけど、』(幻冬舎)で「占いは言葉のエンタテイメント」と語るワクサカさん、占い結果をその人への“メッセージ”として届けるアイビーさん。2人が思う「占い」とは? 後編をお届けします!

(前編はこちら)

占いは日本人にとって駆け込み寺

――占いは「怖い」「いかがわしい」と思う半面、「見たい」「知りたい」と思って、ついやってしまいますが。

ワクサカ 今回刊行した拙著『男だけど、』の中で、南インドにもいったのですが、なぜインドでは占いが生活に根付いていて、日本ではいかがわしいと思われるのか? インドでは「神様」がインド人の生活の中で近い存在であるわけですが、これが日本人だと無宗教で、宗教に対するアレルギー感って強いじゃないですか。つまり、「神様」ってものが、生活とは切り離された存在になっているわけです。切り離されたものだから、「精神世界はやばい」「占いにはまるやつはやばい」と、まあ無意識で思いますよね。僕も基本は、そんな無意識を持っています。

 著作の中で「占いは言葉のエンタテイメント」と書きましたが、占いに対する好奇心はある。じゃあ、それってなんなのか? 根底にあるのは「不安感」でしょうね。無宗教が大半を占める日本人にとっては、自分の心を支えるものがない。でも、宗教の代わりに占いがある。日本って占い大国だと思いますよ。占いは、必要とする人がいる限り、必要なんでしょうね。まあ、駆け込み寺みたいになってますよね。

アイビー 占いの立ち位置については、今でも考えてしまいますね。

ワクサカ その揺らぎはすごく大事でしょう。自分がやっていることをどっかで信じないって大事。そこの遊びの部分がなくなったら、終わりですよ、人生って。占い師って人に与える仕事だし、仕事って何でも人に与えるけど、「この車は絶対壊れないし、絶対交通事故起こしません」って言われた車と、「この車は安全に運転していただければ壊れませんが、機械だし、いろいろな偶然もあるので、故障は起きます」って言われた車、どっちを信じますかって言われたら、「絶対」って言っているほうは信じないじゃないですか。信じる人もいますけど、余裕のある人は後者ですよね。

 与えることを仕事にしている人は、どこかで「疑い」ますよ。僕もコントを作るとき、「これおもしろいのかな?」って締め切りまですごく悩んで疑うし、その結果、だだすべりもするし(笑)。それでも信じ切っちゃうよりも、疑うほうが大切だと思います。

男性が占いにはまるとまずい!?


――日本では、占いをするのは女性が圧倒的に多いですよね。

アイビー 女性って生理があって現実に戻されるし、ごはん食べたいとか、おいしいもの食べたいとか、そういう欲求に忠実じゃないですか。

ワクサカ 女性って生きることに忠実ですよね。生物学者の福岡伸一さんが「女性は生きることに対して意味があるという動物だ」とおっしゃっていて、女性は生をつなぐって役目がいまだにあるけど、男ってセックス以外、種を与える以外に何もないんですよ。男は無意味な生き物だから、政治を作るし、宗教を作るし、戦争するし、星を見て語る。

アイビー 占いってそこに実体のないものだから、女性がそれを好きなのって一時の現実のつらさを忘れられるからかなと。だからはまる人もいるんですけど。でも私、男性のほうが占いにはまっちゃったらやばいと思うんですよ。男の人が占いと強く結びついちゃうと、あがりすぎちゃう感じがして。女の人と占いってバランスがとれているのかなって、なんとなく思います。

ワクサカ 男なんか無意味な生き物だから、占いっていう根拠のない世界にのめりこんでしまったら、どんどん無意味の世界がずーっと続いて戻れなくなるでしょうね。無意味は大事だけど、「一瞬の無意味」がすごく大事で、最終的にはどこかの構図に着地しなきゃいけない。ずーっと無意味の世界にいると恐怖ですよね。無意味=死、だから。でも女性は戻れるっていうか、ドライな人が多い。

――『男だけど、』の終盤では、念願のアガスティアの葉を体験されますが、未来は当たっていましたか?

ワクサカ 未来にまつわる占いの結果って、忘れちゃうんだよね。意味付けされたことを忘れちゃうっていうか。いいこと言われたなーで終わっちゃう。結局、自分の未来に対する不安って漠然としていますよね。人間の悩みは、「漠然とした将来に対するもの」か、「人間関係」か、究極この2つなんですよ。未来ってただ漠然としているだけのものなわけで。未来に対する占いを聞いたところで、その未来自体が漠然としているから、結局忘れちゃうんですよね。でも、1個だけ覚えているのがあって、来年モテるらしいですよ、僕。いまから楽しみです(笑)

★アイビー茜(あいびーあかね)
7歳のときからタロットに親しみ、独学でさまざまな占いを学ぶ。大学、専門学校卒業後、月の占い師アイビー茜として活動。鑑定には西洋占星術、宿曜占星術、タロットを用いる。
女性ファッション誌『NYLON JAPAN』(カエルム)、『nicola』(新潮社)などで連載を持ち、占いとファッションのコラボレートも得意。著書に『アイビー茜のルナモンスター占い』(扶桑社)。
アイビー茜公式HP
★ワクサカソウヘイ
1983年生まれ。文筆家。小説からコラム、脚本までその執筆活動は多岐にわたる。また、コント作家・芸人として、コントカンパニー「ミラクルパッションズ」にも参加。主な著書に『中学生はコーヒー牛乳でテンションが上がる』(情報センター出版局)、『今日もひとり、ディズニーランドで』(イースト・プレス)など。
『男だけど、』
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